【カナタ電話第1巻第4号】

キーワード:예부터옛부터か, 사이 ㅅ 3

Q:(第1巻第4号:1991年冬)「예부터」と「옛부터」のどちらを書くのが正しいでしょうか。
A:」と「」の品詞を調べると,「」は名詞で「」は冠形詞です(国語大辞典,民衆書林,1990参照)。次のような例によって私たちは名詞「」の用法を確認できます。
 例1)예나 다름없는 소박한 안심
    예로부터 내려온 이야기
    예스러운 멋
 冠形詞「」が使える場所は,次の例2a)のように名詞を修飾する場合か,2b)のように後続する名詞と複合語を形成する場合に限られます。
 例2a)옛 기억, 옛 말
  2b)옛일, 옛이야기, 옛적, 옛날, 옛사랑, 옛정, 옛집, 옛추억, 옛친구
 しかし最近では,「」を使うべきところに「」をさほど抵抗なく使う場合がよくあります。
 例3)옛부터 즐겼던 콩국, 미숫가루
    옛스런 모습을 잘 간직하고
 上記の辞書によれば「」は冠形詞なので,「옛부터, 옛스런」は「冠形詞+助詞または接尾辞」の構成となっているために,常識的には国文法から逸脱しているといえます。名詞「」を使うべきところに冠形詞「」が使われるのは,いかなる理由からなのかわかりませんが,冠形詞「」の領域が名詞にまで拡大しつつある過程を示しているのではないかと思われます。
 
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キーワード:宗親会,花樹会

Q:(第1巻第4号:1991年冬)私が住んでいる慶尚北道醴泉邑では「安東金氏花樹会」「金海金氏宗親会」など,姓氏ごとに「宗親会」と「花樹会」を書き分けている看板を見かけます。どのような場合に「宗親会」と「花樹会」を使い分けるのか知りたいです。また,「宗親」は王の一族のみを称するので「宗親会」は過去に王族であった姓氏のみが使用できるという人がいますが,これに対する解釈もあわせて教えてください。
A:国語辞典を見ると,「花樹会」は「姓を等しくする一族の集まりや宴会」と説明されており,1920年に編纂された「朝鮮語辞典」を初めとして比較的早い時期に出版された辞典にも花樹会として立項されています。しかし「宗親会」は民衆書林の「国語大辞典」に「一族同士が集まって行う宴会など」として掲載されたのが最初であると思われます。一方「宗親」は1880年に刊行された「韓仏辞典」を初めとして文世榮の「朝鮮語辞典」(1938)など比較的速い時期の辞典の見出し語として収録されていますが,すべて「王の親族,王の身内」と説明されています。ところが今日広く使われている辞書と字典類では「宗親」に対してそれぞれ異なる解釈を見ることができます。ハングル学会の「新ハングル字典」は日本統治時代あるいはそれ以前に刊行された辞書の説明と同じですが,民衆書林の「国語大辞典」には「1.王の親族・宗室,2.同母の兄弟,3.親族」となっており,「漢韓大字典」には「1.同母の兄弟,2.同族の人,3.(韓)帝王の家族」と説明されています。
 上に提示した辞書の解釈,特に民衆書林の「漢韓大字典」を参照すれば「宗親」が我が国では伝統的に「王室の親族」を意味する言葉として使われていたが,今日意味が拡大して「同母の兄弟,親族」の意味を持つに至ったと見ることができます。
 比較的早い時期に刊行された辞典類に「宗親会」が現れずに「花樹会」のみが収録されていることを見ても,伝統的に我が国では「花樹会」が親族の集まりを意味する言葉として使われてきたといえます。ところが「宗親」が「王の親族」のみならず「同母の兄弟」または「同族」を指し示す言葉として意味が拡大して使われ始めるにつれて,「宗親会」が「花樹会」と同じ意味で使われるようになったということができます。
 伝統的に「同族の集まり」を「花樹会」と言い,また「宗親」が王の親族のみを指し示していたので「宗親会」を「花樹会」と同じ意味で使ってはならないという人がいます。しかし言語は常に変化し続けており,あらゆる語彙が絶えず語源と漢字の字句的意味に合致する意味をもっていることはないので,今日では「宗親会」と「花樹会」を同じ意味であるとみなして使っても差し支えないだろうと思います。「宗家」「宗孫」などが必ずしも祖先が王であった人の家庭でのみ使われるのではなく多くの他の姓氏の人々が使っていることを見ても「宗親会」という言葉を強いてかつて王であった一族の集まりのみをさすと言う必要はありません。
 
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キーワード:compact disk,cakeのハングル表記

Q:(第1巻第4号:1991年冬)compact disk,cakeはハングルでどのように表記すべきでしょうか。
A:compact diskをハングルで表記すれば,「콤팩트 디스크」になります。compact diskは原語である英語の発音がdisk]ですが,は「」に対応するためです。もちろん,アメリカ英語における発音はdisk]なので,アメリカ英語を基準にすればは「」に対応することから,「캄팩트 디스크」になります。しかし,一般的に英語起源の外来語は英国英語の発音を基準にしてハングル表記をします。たとえば,concrete, concert, contest, contact lens などはアメリカ英語を基準にしてハングル表記をすれば「」系統になりますが,英国英語を基準にして,「콘크리트, 콘서트, 콘테스트, 콘택트 렌즈」と表記します。例外的にジャズの楽団を意味する combo はアメリカで生まれた言葉なのでアメリカ式英語に従って「캄보」と表記します。
 cake はハングルで「케이크」と書きます。外来語表記法第3章第1節英語の表記細則は,単母音に続く語末の無声破裂音のみをパッチムで表記するように定めています。そこで book[buk] は「부크」ではなく「」と書きます。しかし,長母音や二重母音に続く語末の無声破裂音はパッチムで書かずに「」を付けて書きます。たとえば,park, lake[leik] は「파크,레이크」と書きます。cake[keik] も二重母音のあとで語末の無声破裂音が現れるので,ハングル表記は「케이크」になります。同様に make, steak, brake なども全て「」を付けて書くので「메이크,스테이크,브레이크」になります。
 
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キーワード:을지로のローマ字表記,ハングルのローマ字表記

Q:(第1巻第4号:1991年冬)「을지로」がと表記されているのを見ました。どうしてと表記しないのでしょうか。
A:을지로」を「国語のローマ字表記法」に従ってローマ字表記をすればになります。と書かないのは,「을지로」を発音する時に「」の「」が濃音の「ㅉ」として実現されますが,濃音は無声音だからです。もう少し発音に忠実にローマ字表記すれば,濃音の「」は 'tch' に対応するのでとすべきでしょうが,「国語のローマ字表記法」第3章第1項付則の「形態素が結合する時に現れる濃音は表記しない」という規定に従ってとは書きません。ただし,濃音は無声音なので「지」が無声音として実現される時に対応するローマ字である 'ch' を使ってと書きます。
 
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キーワード:량 か 양 か

Q:(第1巻第4号:1991年冬)「거품-량, 거품-양,ADZT-량, ADZT-양,알칼리-량, 알칼리-양」の表記の内,どちらが正しいでしょうか?
A:お尋ねの単語の表記は,「거품-양,ADZT-양,알칼리-양」としなければなりません。これらと関連する項目はハングル正書法第11項「漢字音 랴, 려, 례, 료, 류, 리 が語頭に来る時は頭音法則に従って 야, 여, 예, 요, 유, 이 と書く」とハングル正書法第11項付則1「語頭以外の場合には本音のまま書く」です。これらの規定は上の単語において「量」の環境を語頭とみなすか,さもなければ語中とみなすかに従って表記を変えなければならないことを示しています。
 これらの項目に関するもう少し詳しい説明は『ハングル正書法解説』(国語研究所,1988)で探すことができます。ここでは,「固有語の後に漢字語が結合した場合は漢字語形態素がひとつの単語とみなされるので頭音法則を適用して書く」として「구름-양[雲量], 허파숨-양[肺活量]」を例としてあげています(21ページ参照)。このような解釈は,漢字語に先行する単語が外来語である場合にも適用できると思われます。
 
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キーワード:父の兄弟の呼び方

Q:(第1巻第4号:1991年冬)父は5人兄弟の三番目です。父の兄弟のうち,一番下だけが未婚でそれ以外は全て既婚です。父の兄弟をどのように区別して呼べばよいかわかりません。教えてください。
A:一般的に,父の兄は全て「큰아버지」,父の弟は結婚していれば「작은아버지」と呼び,結婚していなければ「삼촌」または「아저씨」と呼びます。従ってお父上が5人兄弟の3番目でいらっしゃるのなら,「(첫째)큰아버지−(둘째)큰아버지−아버지−(첫째)작은아버지−(둘째,막내)작은아버지」のように区別して呼べばよいでしょう。
 「삼촌」は親等を示す言葉なので,未婚の父の弟を「삼촌」と呼んではいけないと主張する人がいます。もちろん「삼촌」は親等を示す言葉でした。ところが「아저씨」が家族以外の男性を呼ぶ言葉としてより広く使われるようになるにつれて,親等を示す言葉であった「삼촌」が勢力を得たのです。19世紀初めの茶山丁若繧ェ‘雅言覺非’に‘三寸以稱其叔父亦陋習當改者’と指摘しているのを見れば既に19世紀初めに‘三寸’が父の弟を指し示す言葉として使われていたと言えるでしょう。今日この言葉は「‘三寸叔’の縮約形で父の兄弟を示す言葉」として辞書にも載っています。
 一方,「큰아버지」を「伯父()」,それ以外の父の兄を「仲父()」,父の弟を「叔父()」,父の一番下の弟を「季父()」のように漢字語を用いて呼ぶのを時折耳にしますが,このような言葉は指称語として用いることはできても,呼称語としては適切ではありません。
 
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