【カナタ電話第6巻第2号】

キーワード:字母の名前の発音,標準発音

Q:(第6巻第2号:1996年夏)ハングル字母「ㄷ, ㅈ, ㅊ」等はそれぞれ「디귿, 지읒, 치읓」と書かれますが、これを読む際には‘디귿이[디그시/디그디], 지읒이[지으시/지으지], 치읓이[치으시/치으치]のうちのどちらがよいですか?
A: 一般的な国語パッチムの発音で‘’を除く単パッチムや複パッチムが母音で始まる助詞や語尾、接尾詞と結合される場合には、本来の音価のまま,後の音節の初声として発音されるのが原則です(標準発音法第13項参照)。そして重パッチムが母音で始まる助詞や語尾,接尾詞と結合する場合には二つ目の字母だけが後ろの音節の初声として発音されるのが原則です(標準発音法第14項参照)。

1.単パッチムや複パッチムの例
  빚-이[비지], 빛-이[비치], 덮-이다[더피다], 깎-아[까까], 있-어[이써], 꺾-이다[꺼끼다]
  参照)강-이[강이], 형-을[형을], 본성-에[본성에]
2.重パッチムの例
  넋-이[넉시], 흙-을[흘글], 핥-아[할타], 앉-아[안자]

 しかし,いくつかのハングル字母の名前の発音は一般的な場合とは異なります。
 ハングル字母の名前は,名前の中にその字母の初声と終声をともに表すために人為的に作られたものです(「訓蒙字会」[1527年 崔世珍 著]にハングル字母の名前が初めて現れる)。このような理由からなのかどうかわかりませんが、同じパッチムを持つ他の語彙とは異なった発音が現れます。

3.パッチムが「」である場合
 (1)닫-아[다다], 닫-을[다들], 굳-어[구더], 굳-을[구들]
 (2)해돋-이[해도지], 굳-이[구지](口蓋音化の例。標準発音法第17項 参照)
 (3)디귿-이[디그시], 디귿-을[디그슬]
4.パッチムが「」である場合
 (1)빚-이[비지, 빚-을[비즐]
 (2)젖-이[저지], 젖-을[저즐]
 (3)지읒-이[지으시], 지읒-을[지으슬]
5.パッチムが「」である場合
 (1)부엌-이[부어키], 부엌-에[부어케]
 (2)동녘-이[동녀키], 동녘-에[동녀케]
 (3)키읔-이[키으기], 키읔-에[키으게]

 上記3,4,5の(3)は原則的には「標準発音法」により「디귿이[디그지], 디귿을[디그들], 지읒이[지으지], 지읒을[지으즐], 키읔이[카으키], 키읔에[키으케]」と発音しなければなりませんが、実際の発音は「[디그시], [지으시], [키으기]」のようになされるので,「標準発音法」でもこのような現実の発音を反映して規定化されています。これによりハングル字母の名前は次のように発音されねばなりません(標準発音法第16項参照)。

字母名称[発音]母音で始まる助詞と連結する時の発音
   +이   +을   +에
 ㄱ기역[기역]기역이[기여기]기역을[기여글]기역에[기여게]
 ㄴ니은[니은]니은이[니으니]니은을[니으늘]니은에[니으네]
 ㄷ디귿[디귿]디귿이[디그시]디귿을[디그슬]디귿에[디그세]
 ㄹ리을[리을]리을이[리으리]리을을[리으를]리을에[리으레]
 ㅁ미음[미음]미음이[미으미]미음을[미으믈]미음에[미으메]
 ㅂ비읍[비읍]비읍이[비으비]비읍을[비으블]비읍에[비으베]
 ㅅ시옷[시옫]시옷이[시오시]시옷을[시오슬]시옷에[시오세]
 ㅇ이응[이응]이응이[이응이]이응을[이응을]이응에[이응에]
 ㅈ지읒[지읃]지읒이[지으시]지읒을[지으슬]지읒에[지으세]
 ㅊ치읓[치읃]치읓이[치으시]치읓을[치으슬]치읓에[치으세]
 ㅋ키읔[키윽]키읔이[키으기]키읔을[키으글]키읔에[키으게]
 ㅌ티읕[티읃]티읕이[티으시]티읕을[티으슬]티읕에[티으세]
 ㅍ피읖[피읍]피읖이[피으비]피읖을[피으블]피읖에[피으베]
 ㅎ히읗[히읃]히읗이[히으시]히읗을[히으슬]히읗에[히으세]

 
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キーワード:갑절, 곱절,倍数

Q:(第6巻第2号:1996年夏)「갑절」と「곱절」との違い、また「두 갑절」という言い方が可能かどうか知りたいです。
A:갑절」はある数量を2回合計するという意味を持っていますが、「곱절」は同じ数量を何回か合計するという意味を持っています。言い換えると「갑절」は2倍という意味のみを持っていますが,「곱절」は3倍(세 곱절),4倍(네 곱절)のように倍数を数える単位として使用される語です。ですから「두 갑절」という表現は2倍という意味をすでに持っている「갑절」という語にさらに数量を表す2()という不必要な冠形詞を重ねて付けたものですから使わないほうがよいです。
 
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キーワード:반올림,四捨五入

Q:(第6巻第2号:1996年夏)「반올림(四捨五入)」に該当する英語表現として round up と round down がありますがこれを韓国語に訳すとき,round down に該当する語がないようなので,適当な翻訳語があるかどうか知りたいです。
A: 韓国語と英語ではその基礎となる文化が互いに異なっているために語彙を体系化する方式においてもある程度の差異があり得ます。たとえば,わが国では「벼, 쌀, 밥(稲、米、ご飯)」のように区別して使用している言葉が英語では rice の一語だけを使用しますが,これは互いの食文化が違うために生じた語彙の差です。同様に韓国語で「이상, 이하(以上、以下)」という表現は基準となる数を含む語ですが,英語の more than, less than は基準となる数を含まない「超過、未満」の意味を持っている語です。したがって「50以下」に該当する英語の表現は less than fifty ではなく50を含む fifty and less でなければなりません。このような差異は韓国語を英語に翻訳したり英語を韓国語に翻訳するときに大いに注意すべき部分です。
 ところでご質問の「반올림」という語は4以下を切り捨て5以上は繰り上げるという四捨五入を意味しますが、4以下を切り捨てるというのは英語の round down に該当し、5以上を繰り上げるのは英語の round up に該当します。ですからわが国の「반올림」に該当する正確な英語表現は round up or down でなければなりません。したがって英語の round up or down 全体が韓国語の「반올림」の意味を持つ表現であり round down は当然に round up の概念を前提とするものなので,round down だけのための翻訳語は必要ありません。
 
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キーワード:ネットのハングル表記,外来語のハングル表記

Q:(第6巻第2号:1996年夏)このごろの新聞・雑誌を見るとコンピュータに関係する新しい用語が相当多く使われています。internet, network, netscape, intranet, kidnet, netday, web 等がその例といえますが 'net' の入っている語の場合「인터넷」のように「」と表記したり,「네트워크」のように「네트」と表記したりしますが、どのような場合にこのように表記が変わるのですか?
A: 外来語表記を定める場合には常に二つの事項がともに考慮されます。「外来語表記法」に示されている音声対照表による音声規則と、第1章5項に明示されているすでに固定された外来語は慣用を尊重するという原則がまさにそれです。つまりある外来語がひとつの形態ですでに広く使われている場合、これに規則を適用して改めるのは容易でないということです。そこで広く使われている語の場合,慣用を尊重して表記を定めることになると外来語表記法の音声規則と合わないことも出てくることになります。問題が生じる外来語の場合、外来語表記法の音声規則と慣用の内,どちらを尊重すべきかということは別途審議を経て決定されます。
 ご質問の外来語の場合、「外来語表記法」第3章1節1項によると、短母音の次に来る無声破裂音[p]、[t]、[k]は (gap)、(cat)、(book)のようにパッチム(ㅂ, ㅅ, ㄱ)で示すこととなっており, net の場合この原則によれば「」 と書かなければなりません。しかし net という単語は既に「네트」という形態でしっかり固定されている単語であるため,審議の過程でこれの表記を「네트」 と決定しました。ところで「外来語表記法」第3章1節10項によると外来語が複合語である場合,すなわち単独に使われる語の合成によってできている語の場合、その外来語はそれを構成している語が単独で使われるときの表記どおりに書かれることになっています。network の場合はこれを複合語と見なし,複合語規定をまず適用して net の単独表記を network に適用した結果「네트워크」 と表記することになりました。ところが kidnet や netday の場合は充分に複合語と認識できる語ではあるが,慣用を尊重して「키드넷, 넷데이」と書いています。そして internet や intranet そして netscape の場合には複合語と見ることができないために 「네트」の単独表記と関係なしに、語末での無声破裂音はパッチムで表記されるという規定と短母音と流音・鼻音以外の子音との間に来る無声破裂音はパッチムで表記するという規定を考慮して「인터넷, 인트라넷, 넷스케이프」と表記することとなりました。そして web の場合は、語末と全ての子音の前に来る有声破裂音は 「」 をつけて記すという第3章2項の規定によれば「웨브」と表記しなければなりませんが、音声規則による規定よりも慣用を尊重して「」と記すことになったのです。

 
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キーワード:変則活用形容詞の表記

Q:(第6巻第2号:1996年夏) 「시커멓다 」の過去形表記はどうなりますか?
A: 「시커멓다 」の表記に関連する規定は「ハングル正書法」18項に出ています。語尾が変化する際に、その語幹や語尾が原則から逸脱する場合は逸脱した通りに表記すると規定されていますが、そのうちの一つとして語幹末のが脱落することをあげています。その例の一つとして「까맣다」を挙げていますが,「까마니, 까말, 까마면, 까맙니다, 까마오」と表記するように定めています。「시커멓다 」も「까맣다」と同じ変化を示すので、語尾が結合する時が消える形で書かなくてはなりません。ところで「ハングル正書法 解説」に次のような補充説明が出てきます。

  形容詞の語幹末パッチムが語尾 –네や母音の前で消える場合、消えた通りに記す。
  ただし語尾 –아/–어 と結合する時には –애/ –에 となる。
  노랗다 = (노랗네)노라네  (노랗은)노란     (노랗으니)노라니
        (노랗아)노래   (노랗아지다)노래지다
  허옇다 = (허옇네)허여네  (허옇을)허열     (허옇으면)허여면
        (허옇어)허예   (허옇어지다)허예지다

 語尾 –아/–어 ではないが過去を表わす先語末語尾(時制補助語幹) –았/ –었 –아/–어 で始まるので,この規定を適用して書かなくてはなりません。したがって시커멨다と表記しなくてはなりません。
 
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キーワード: 포승줄 포승 か,同義反復

Q:(第6巻第2号:1996年夏) 「포승줄」と言わずに,「포승」と言うべきではないでしょうか?
A: 「포승」は「捕縄」と書く漢字語で、「罪人を捕らえて縛る縄」を意味します。「 縄」が「」に相当するので、「」を付け加えて「포승줄」と言えば,既に「포승」に含まれている「」の意味と衝突します。このような理由から「포승줄」は間違った言葉であるとする見解が存在します。
 ところが,「標準語規定」にこのような言葉を処理する基準に関する規定は特に存在しません。このような類の言葉は「포승줄」以外にも韓国語の中に時々見かけます。同義反復現象と言いうるこのような現象は、既存の単語の構成を見ても、その意味が明確に現れない場合にその意味を補完するために同じ意味を持つ固有語成分を追加することによって現れるものであると思われます。種々の国語辞典でもこれらを間違った語であるという処理はしていません。同一の現象に属する「초가집 (草家チプ)」を見れば、どの国語辞典もこの単語を認定しています。「포승줄」の場合も,「우리말 큰사전」(한글학회)に収録されています。
 
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