【カナタ電話第3巻第4号】
キーワード:난 か 란 か,語中のㄹ の表記
Q:(第3巻第4号:1993年冬)「○○난」,「○○란」などで、「난」と「란」の使い方がひどく紛らわしいです。確実に区別できる方法はないのでしょうか?
A:‘ハングル正書法’第11項[補足4]で「接頭辞のように使われる漢字がくっついてできた言葉や合成語で後続語の初声が「ㄴ」または「ㄹ」音であっても頭音法則に従って記す’として「역이용 逆利用’‘열역학 熱力学’‘해외여행 海外旅行’などを例として提示しています。ところがこの例は‘漢字語+漢字語’からなる単語で、‘固有語+漢字語’で出来ている単語に対する例がないため、これを‘ハングル正書法解説’で別途説明してありますが、その内容は“固有語の後に漢字語が結合した場合は、後ろの漢字語形態素がひとつの単語として認識されるため、頭音法則を適用して記す”とされています。その例は‘개-연(-蓮)(コオホネ)’、‘구-름양(‐量)(雲量)’、‘숫-용(‐龍)(雄龍)’などがあります。
また‘ハングル正書法’第12項[補足1]で“単語の初声以外の場合には本音通りに記す”とし,その例として‘쾌락(快樂)’、‘극락(極樂)’、‘거래(去來)’、‘왕래(往來)’、‘부로(父老)’、‘연로(年老)’、‘지뢰(地雷)’、‘낙뢰(落雷)’、‘고루(高楼)’、‘광한루(廣寒楼)’、‘동구릉(東九陵)’、‘가정란(家庭欄)’などを提示しています。
ここで重視しなければならないことは、‘가정란’ですが,[附則1]は結局,単語の初頭以外の場合は、頭音法則が適用されないということを明示している点です。あるいは‘릉(陵)’と‘란(欄)’は独立的に使用されることもあるという意味で‘능’‘난’と綴らなければならないとする意見もありますが,‘왕릉(王陵)’、‘정릉(貞陵)’のように書かれる‘릉’や‘독자란(読者欄)’、‘비고란(備考欄)’のように書かれる‘란’は一音節からなる漢字語形態素であり,漢字語の後に結合する時には一つの単語とみるのは難しい為に本音のまま記すことにしたものです。‘강릉(江陵)’ 、‘공란(空欄)’、‘답란(答欄)’、‘투고란(投稿欄)’、‘학습란(学習欄)’などの例をこれに追加することができます。‘固有語+漢字語’の場合に対する言及がないのは同様です。そこで‘ハングル正書法解説’ではこれに対しても別途言及し、‘어린이−난’,‘어머니−난’,‘가십−난(gossip)’のように固有語や(欧米)外来語の後ろに結合する場合には、第11項[附則4]に見られた「‘개-연’、‘구-름양’の場合のように頭音法則を適用して記す」と説明されています。
したがって、‘漢字語+欄’は,その‘欄’が独立性を持たないものと見て‘○○란’と書かなければならず、‘固有語(または外来語)+欄’は,その‘欄’が独立性を持つとみて‘○○난’と書くのが正しい綴り字です。
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キーワード:固有数詞の分かち書き
Q:(第3巻第4号:1993年冬)「스물여섯」,「서른여섯」などは「스물」と「여섯」,「서른」と「여섯」をくっつけて書かなければならないのか、間を空けて書かなければならないのか教えて下さい
A:‘ハングル正書法’第44項で「数を記す時には‘万’単位で分かち書きをする」と規定し,「십이억 삼천오백오십육만 칠천육백구십팔: 十二億 三千五百五十六万 七千八百九十八’と‘12억 3456만 7898’を例として提示しています。
十進法によって分かち書きをするのが合理的ではありますが、あまり細かく区切ってしまうと意味の把握に支障をきたすので,ある程度くっつけて書かなければならないと思われますが,どのようにくっつけるのかが問題になります。アラビア数字で金額を表記するときのように3桁単位で区切って‘십 이억삼천오백 오십육만칠천 육백구십팔: 十 二億三千三百 五十六万七千 六百九十八(1,234,567,698) ’のようにすべきか、あるいは、韓国式に数字を数える方法に倣って‘만, 억, 조…(万、億、兆…)’単位にすべきかという問題です。ところで,前者のような方式は‘十’と‘二億’、‘三百’と‘五十六万’がはなれるので、これを防ぐために第44項の規定のように定めたのです。ただし,金額を記す時には改竄などの事故を防ぐために、
일금:오십오만팔천이백구십듁원정
(一金:五十五万八千弐百九十六ウォン整)
돈:일백삼십팔만칠천원임
(金:壱百参十八万七千ウォン也)
などのようにくっつけて書くことが慣例となっています。
したがって‘ハングル正書法解説’第43項で、‘이십칠대 二十七台’‘구십삼차 九十三次’などのように‘대 台’,‘차 次’などの助数詞とその前の数字をくっつけて書いたものや、‘標準語規定’第6項で序数詞に対する標準語を‘열두째(第12)’,‘스물두째(第22)’,‘열둘째(第12番目)’,‘스물둘째(第22番目)’、などとして言及すると同時に、‘‐개’に先行する数をくっつけて書いたのは規定に符合するものです。したがって、「스물여섯」,「서른여섯」は当然くっつけて書かなければなりません。
ところで、‘標準語規定’第29項[補足2]と‘標準語規定解説’第29項[補足2]で標準発音法に対して言及する際に、「스물 여섯」,「서른 여섯」などと分かち書きしてありますが,これは単純な思い違いのようです。修正しなければならないでしょう。
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キーワード:「記念日」か「紀念日」か
Q:(第3巻第4号:1993年冬)新聞記事で見ると「기념일」の漢字表記が‘記念日’もあり、‘紀念日’もあります。これは表記の混乱ではありませんか?
A:違います。二種類とも正しい表記です。
この表記の問題は辞書を作る人をずっと悩ませてきた問題です。近代的国語辞典の嚆矢とみなされている文世榮の「우리말辞典(初版 1938、7版 1954)」で‘기념일(紀念日)’,‘기념(紀念・記念)’と掲載されて以来、「큰사전」(1947〜1957)では‘기념일(紀念日)、기념(紀念)、기념(記念)’とし,「기념일」の表記が‘紀念日’として定着するように思えたのですが,李熙昇編「국어대사전」(初版 1961、修正増補版 1982)では‘기념일(記念日、紀念日)’‘기념일(記念,紀念)’とし,北朝鮮の「조선말사전」(1962)では、‘기념일(紀念日、記念日)’‘기념(紀念、記念)’と, 신기철/신용철編「새 우리말 큰사전」(増補版 1975)では、 ‘기념일(‐‐日),기념(紀念、記念)’となって「기념일」の表記は‘紀念日、記念日’両方とも認定されるようになりました。ところが比較的最近に出た金星版「국어대사전国語大辞典」(1991)では、‘기념일(記念日),기념(記念、紀念)’と書かれ,한글学会の「우리말 큰사전」(1991)では‘기념일(紀念日),기념(記念、紀念)’と書かれ、「기념일」の表記がどちらか一方でのみ書かれるようになったため、新聞記事を書く人はどの辞典を参照するかによって、それぞれ別の表記をするようになっています。それゆえ、文字を書く人の表記上の間違いと言うことは出来ません。
このような状況を表にしてみると次のようになります。
| 1960年代以前 | 60〜80年代 | 90年代 |
기념 | 文世榮編 | 큰사전 | 李熙昇編 | 조선말사전 | 金星版 | 한글学会編 |
紀念,記念 | 1.紀念,2.記念 | 1.記念,2.紀念 | 紀念,記念 | 記念,紀念 | 記念,紀念 |
기념일 | 紀念日 | 紀念日 | 記念日,紀念日 | 紀念日,記念日 | 記念日 | 紀念日 |
二つの表記の差異をもたらす二つの漢字を調べてみると、中国司馬遷の‘史記’という本の帝王の仕事を記した「本紀」、これを見本とした我が国(韓国)の‘三国史記’の中の「本紀」などの表記で見ることができるように,両者に区別はありますが、中国‘釋名’の「釋言語」編に見える‘紀、記也’という記述と、同書「釋典藝」編の‘記、紀也’という記述に見るように,‘記す’という意味で二つの文字が通用していたことがわかります。
この単語は漢字語なので、その歴史的な用法を調べてみると、‘記念’の場合は、中国唐代初期の張文成(657〜730)の作品といわれる‘遊仙窟’に書かれている例が最も古いものであるとされています。これと比べて、‘紀念’の場合は歴史的表記を示す典拠はどの辞典にも載っていません。
参考として、現在漢字文化圏である日本と中国の対照的な状況を見ると、次のようになります。日本では20世紀初頭には‘紀念’という表記もありましたが、権威ある漢字辞典である‘大漢和辞典’で‘紀念’を‘記念’の誤りとして処理して以来、その後の国語辞典では全て‘記念’と統一して表記し、その合成語もすべて‘記念――’として記しており、そのように使用されています。‘記念燈、記念碑、記念寫眞、記念像、記念式、記念葉書、記念日、記念章、記念切手、記念祭、記念塔、記念品…’などがその例です。これとは反対に、中国(台湾)では‘記念’という単語を辞書に掲載してはいますが、実際の用例では‘紀念’という表記を主に用いています。‘紀念、紀念日、紀念週、紀念册、紀念品、紀念會’など,日本では使われない表記の単語のみが’漢文大辞典(日本の‘大漢和辞典’をそのまま翻訳したと言う)に掲載されているだけです。
‘기념일’は‘기념’と‘일’の複合語であり、一旦‘기념’の表記が決定されればその表記が自ずと決定されることになります。‘기념’の場合、漢字の‘記’と‘紀’が別個の文字であると同時に互いに通用する場合があることから,‘記念’と‘紀念’がどちらも用いられるので、たとえ、歴史的典拠は‘記念’しかなくても、二つとも認定しないわけにはいかないのです。漢字の微細な意味の差異は無視することになっていますが、恰も標準語の査定において複数の標準語を認定することと同じです。したがって複合語である‘기념일’をはじめとして、‘기념사(記念辞)、기념비(記念碑)、기념품(記念品)…’などの表記も複数の示し方があって当然でしょう。実際に文字を書く人が表記しようとするとき、どちらを選択するかということはその人自身の表現的自由であると言えるでしょう。
ただし、最近のコンピュータ用ワードプロセッサーで、文書作成をするとき広く使われているプログラムの漢字単語変換に‘記念、紀念、記念款(館の誤りであると思える)、記念物、記念碑、記念辭、記念像、記念式、記念日、記念章、記念祭、記念塔、紀念品、記念號’のようにどちらか一方だけの表記があることは是正されなければなりません。
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キーワード:‘교육원 教育院’ か‘연수원 研修院’ か
Q:(第3巻第4号:1993年冬)会社で社員達を教育する機関を‘教育院’と呼ぶのがいいのでしょうか?‘研修院’と呼ぶのがいいのでしょうか?二つの単語は互いにどのように違うのですか?
A: まず、‘教育’と‘研修’の意味を調べてみましょう。‘教育は‘知識を付与し、個人の能力を伸長させるため、教えて指導すること。狭義的には学校教育だけを意味する。’(金星版「국어대사전」、1991)と説明しています。また一方では、‘知識と技術を教え,人格を育てること。’(한글학회編、「우리말 큰사전」、1992)と定義することもできます。同様に‘教育’は‘成熟した人がまだ成熟していない人に心身の全ての器官を発育させる目的で、一定の方法によって一定期間継続して及ぼす影響。即ち、被教育者の知識・理解・態度を育み、生活を発展させて人格を形成する人間の育成過程のこと。この作用の主体によって家庭教育、社会教育,学校教育などがある。’(李熙昇編「국어대사전」、1982)と説明されています。
‘研修’は‘(学業などを)研究して研鑚すること’(金星版「국어대사전」)、‘学問などを研究し、研鑚すること’(한글학회編、「우리말 큰사전」)、‘研究して研鑚すること’(李熙昇編「국어대사전」)と,類似した説明が示されています。
実際に使用されている用例を通して調べると‘教育院’は‘生涯教育院、頭脳開発教育院、裁判所公務員教育院’などを挙げることができ、‘研修院’は‘税務経理研修院、司法研修院、韓国貿易研修院’などを挙げることが出来ます。
これらの説明と用例を総合してみるとき、‘教育’と‘研修’の語彙的関係は‘教育’が普遍的であるとすると,‘研修’は専門的な意味を表しており、‘教育’が長期的な期間の概念を含んでいる一方,‘研修’は集中的で短期的な意味を含蓄しています。また‘教育’が学校教育のような制度教育、公的教育で広範囲に使用されている一方、‘研修’はもっと細分化され専門的な概念、下位概念として使われており、‘教育’が教育者と被教育者の関係をはっきりと備えている一方,‘研修’は他人の指導よりもある程度の段階にある人が自らの努力と訓練を通じてもっと高い段階に昇るという意味が含まれていると言えるでしょう。
このような意味の違いを考えて‘教育院’と‘研修院’の内で適切な方の言葉を選んでお使いになることを望みます。
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キーワード:計座か口座か,国語の醇化
Q:(第3巻第4号:1993年冬)銀行で通帳取引をする時に使う言葉の中で,‘계좌 計座’と‘구좌 口座’はどちらの用語が正しい表現であるのか知りたいです。
A: ‘計座’は経済用語であって‘계정 계좌 計定計座’の縮約形です。預金計座という意味にもなりますが,簿記で計定(企業の資産・負債・資本・収益・費用の発生を種類別および性質別に元帳に記録・計算するために設定した単位)ごとに金額の増減を借方(「차변 借邊」。複式簿記で計定計座の左側にある部分で、資産の増加、負債または資本の減少・損失などを記入する),貸方(「대변 貸邊」。複式簿記で帳簿の計定計座の右側にある部分で、資産の減少、負債・資本の増加などを記入する)に分けて記録、計算する場所を言います(金星版「국어대사전」1991)。別名‘계정 자리 計定場所’(한글학회編、「우리말 큰사전」1992)とも言います。口座は‘計座の旧称’(金星版「국어대사전」)という解説もありますが,‘日本語からきた言葉’(한글학회編)で正しい言葉は‘計座’であると指摘しています。
国語純化面でも(‘ 국어순화자료집 国語純化資料集’、国語研究所、1988;‘国語純化資料集’国立国語研究院、1991),口座は計座として純化する純化対象用語とされています。それゆえ、‘口座’という言葉の代わりに‘計座’という言葉を使用されるのが良いです。
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